穢多(えた)非人(ひにん)とは何でしょうか?
江戸時代の日本には「身分制度」として士農工商がありました。
教科書で習いました。
欧米の身分制度や、インドのカースト制のように厳格な制度ではなく、職業分類に近い性質だったとも言われています。
ただし日本の士農工商には、更に下の身分があったのです。
それが賤民という身分に追いやられた穢多非人でした。
「人に非ず」と書いて非人と呼ばれた人たち。
この記事では穢多(えた)非人(ひにん)について取り上げたいと思います。
穢多非人を理解する!士農工商の「教科書」は嘘だらけ!?
士農工商は江戸時代の身分制度です。
現在の30代40代の中年世代の方は、こう教えられたはず。
武士は特権階級。農民は重税をかけられている。農民の不満の捌け口として商人や職人より高い身分を与えてプライドを持たせた。
実はコレは嘘だったらしい!
教科書にウソは書かないでほしいな。これも大東亜戦争に負けた行為上に一つかな?
穢多非人や士農工商の身分制度「教科書」はウソだらけ?
教科書の記載は1980年代は
「士農工商で厳格な差をつけた」
としていました。教科書の記述は確実な断定口調です。
ところが、ある時代から教科書の士農工商の記載から、断定口調が無くなります。
「士農工商という身分制度で呼ぶこともある」
教科書の記載は「緩く断定しない」方向へ変わっているそうです。
逆転した日本史を上梓された河合敦氏によれば、町に住む人が町人、村に住む人が百姓、そのくらいの差しかなかったそうです。
呼ぶこともあるって、めっちゃ緩い表記に変わったね
士農工商に入れなかった弱い身分の人が穢多非人
百姓が町人になったり、金で武士の身分を買った町人がいたりと、士農工商の身分の垣根を飛び越えた例は枚挙に暇がありません。
しかし人間が生きていると嫌な仕事が発生するのは今も昔も変わりがありません。
やりたくない仕事は上流から下流に流れる川のように、身分の低い、立場の弱い者へと押し付けられます。
江戸時代に立場が弱く、士農工商の「表」の身分制度に入れなかったのが、穢多や非人と呼ばれる人達でした。
穢多と非人を合わせて賎民と呼びます。
日本の身分制度は垣根が低くて緩かったんですね。
穢多と非人の違い!賎民のくくり
穢多非人は一括にして、同じ身分の人だと捉える風習がありますが、実は全く別のものです。
ハッキリと違いがあります。
穢多とは穢(けがれ)が多いと書きます。
非人とは人に非ずと書きます。
改めて漢字の意味を考えると、差別なんて言葉では表せない、とんでもない名称です。
人に非ずって・・・この字を考えた人は凄いですね
穢多と非人の違い!穢多の仕事と身分
穢多の仕事は斃牛馬(へいぎゅうば)処理、皮革の加工、農業や雑業的手工業が主な仕事です。
斃牛馬(へいぎゅうば)とは牛や馬の死体の事です。
要は牛や馬の死体処理、解体処理です。
江戸時代は仏教が広く深く信仰されていたので牛肉を食用にすることはほとんどありませんでした。
輪廻転生を心底信じていたら「この牛はお前の父ちゃんの生まれ変わりかもな」そんな事を聞かされて牛を食べられる人はいません(;^ω^)
また血は穢れの象徴として信じられていたので、動物の死体処理は「穢れる」として誰もやりたがりませんでした。
私も輪廻転生を一様信じてるんですけど・・・だけど焼肉大好きです( ̄▽ ̄;)
穢多の既得権益!斃牛馬(へいぎゅうば)処理
そんな穢れの多い動物の死体処理を一手に引き受け、既得権益化したのが穢多の人々でした。
穢多が処理した牛や馬の死体は、武具に欠かせない革製品に生まれ変わるのです。
やがて穢多は自らは斃牛馬(へいぎゅうば)を取得する権益だけを行使し、実際の処理は更に下の身分の者へと外注化するようになります。
穢多が外注先に使ったのが「非人」たちです。
穢多と非人の違い!非人は「人に非ず」
穢多より実質的に身分が低かったのが非人です。
人に非ず・・・
非人の多くは乞食だったと言われています。
また穢多が既得権益した斃牛馬(へいぎゅうば)処理の作業を請け負ったのも非人だそうです。
また乞食を非人と呼ぶこともあり、農作物の不作により飢饉が発生すると非人がいちじるしく増えたととも言われています。
穢多は職業を持っている人が多くて、非人になると乞食が多いのですね。
穢多非人(えたひにん)の解放令「賎民解放令」とは
令和の現代では穢多非人の身分は当然ありません。
では穢多非人の人達はいつから「賎民」の身分から開放されたのでしょうか?
明治4年の「賎民解放令」によって晴れて穢多非人は一般人に分類されるようになりました。
明治の一般人は「平民」と呼ばれました。
士農工商が廃止され、四民平等を合言葉に人口の93%が平民になりました。
穢多非人の賎民も平民に加わったのです。
ただし政府の号令だけで、人の心の中に根付いていた差別意識は払拭されることはなく、解放令とは別の呼び名が定着しました。
それが「新平民」です。
「アイツらなんて所詮は新平民だ」
元賤民の穢多非人に対する差別意識は新平民という呼び名で残りました。
士農工商は江戸時代が終わって無くなったてこと。明治の代の中に刀をぶら下げた侍はいないのね。
穢多(えた)非人(ひにん)は戸籍でバレる?
昭和の時代には、部落差別、同和差別、という深刻な問題がありました。
一部の土地に住んでいる人たちが「部落」として差別されていたのです。
被差別部落に住んでいる人たちは、動物の死体の解体や革製品の加工を生業にすることが多かったそうです。
動物の死体の解体?
江戸時代の穢多の人の職業では?
部落差別って聞いたことがある!江戸時代の身分制度までつながる話だったんだ・・・
同和問題、部落問題の根本は穢多非人の差別?
部落差別、同和差別は江戸時代の選民差別まで遡れる問題なのです。
部落出身者は、部落出身という理由だけで結婚が許されなかったり、職業の選択が自由にできなかったりと、差別を受けました。
平成、令和と時代が進み部落差別、穢多非人の差別はほとんど無くなってきましたが、元部落出身者は戸籍から自分が部落出身だとバレルのではないか?と今でも恐れているそうです。
戸籍に差別を受ける村の出身とか書いてあるの?
解放令で穢多非人は無くなった⁉戸籍でばれることある?
戸籍に書かれている内容から、祖先が元賤民の穢多非人だったとばれることはあるのでしょうか?
戸籍から部落出身者だとばれる心配があるのでしょうか?
現在の戸籍謄本に書かれている内容は下記の内容です。
- 戸籍の筆頭者の氏名
- 本籍
- 氏名
- 生年月日
- 父母の氏名と続柄
- 出生事項
- 婚姻事項
「戸籍謄本からあなたが部落出身者だと判明することはありません」
これは弁護士の先生の言葉です。
現在の戸籍謄本からは、祖先が穢多非人だったとか、自分や両親が部落出身者だと第三者にバレルことはありません。
では戸籍からバレルというのは都市伝説なのでしょうか?
実は古い戸籍には「身分」が記載された戸籍が存在したのです。
今の戸籍からは被差別部落出身がバレルことは無いのね。若い子の中では部落差別は聞いたことないな。
穢多非人が戸籍でばれる⁉明治の「壬申戸籍」とは
江戸時代の戸籍は「藩」で管理され、お寺の檀家単位で戸籍が編製されたそうです。
宗門人別改帳(しゅうもんにんべつあらためちょう)と呼ばれました。
これに対し、明治政府が近代国家の樹立を目指し取り組んだのが、明治5年に作成された「壬申戸籍」です。
壬生戸籍には、氏名、年齢、続柄、職業、出生、死去、などの現代の戸籍に近い内容が記載されました。
ところが壬生戸籍は地域によって記載内容が違い、プライバシーにかかわる内容もあったそうです。
壬申戸籍には地域によって記載内容が違った⁉
壬生戸籍に書かれた内容は、明治の身分制度の華族、士族、平民の記載がありました。
家の職業・宗旨である寺・氏神・犯罪履歴・戸主の印鑑・田畑の面積・牛馬の頭数などまで記載されたものがあったそうです。
ここまで記載されると収入や家庭の様子なども想像することができてしまいます。
牛馬の数や畑の広さまで書かれてたの?職業に皮加工とかあったらバレルかもしれない。
壬生戸籍を使った事件!部落や穢多非人の調査に使われた⁉
壬生戸籍を閲覧すれば、先祖の身分や職業が分かる可能性が高いです。
つまり「部落出身者」を見つけることができるのです。
何のためにそんなことをするのか?
- 就職の身分保障のための身辺調査。
- 結婚相手の身辺調査。
などが代表例だったようです。
壬生戸籍の事件!部落差別と穢多非人
1968年(昭和43年)には壬生戸籍が被差別部落民調査のために使われ事件化しました。
2017年にはヤフオクに壬生戸籍が出品されネットで大きな話題になりました。
2019年にもオークションに出品されたそうです。
壬生戸籍を閲覧されたら部落出身者であることや、祖先が穢多非人の賤民だということがばれる可能性があるのです。
「戸籍で部落出身だとばれる!」
これは都市伝説ではなく事実だったのです。
壬生戸籍は閲覧禁止に!
市役所に行って壬生戸籍を閲覧してみよう♪
窓口で「壬生戸籍みたいんですけど・・・」と言っても絶対に見せてくれません。
昔は壬生戸籍は公開されていたのですが、非部落差別者を調査する事件があって以来は「閲覧禁止」で完全にお蔵入りしました。
現在では自分の物でも絶対に見ることができません。
抜け道は無いそうです。
だから戸籍で自分の出身が誰かにバレルことはもうないのです。
穢多非人のまとめ。部落につながる身分差別
- 穢多非人は賤民と呼ばれ差別された
- 穢多は動物の解体が主な仕事
- 非人は乞食が多かった
- 穢多と非人は違いがあった
- 穢多非人や賤民差別は部落差別につながる
- 壬生戸籍は部落差別調査に使われた
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